水瀬ケンイチ氏『賢者の投資術』書評 (副題:生活と投資のバランスを整える一冊)
TL;DR(判断)
-
日本の投資環境は、かつてなく個人投資家に開かれている。
-
ただし、米国株の40年上昇=インデックス万能と短絡するのは危うい。
-
この本の価値は、「生活と投資のバランスを取り戻す視点」にある。
1. この本が教えてくれること
水瀬ケンイチ氏の『賢者の投資術』は、派手な成功談ではなく、
「普通の人が、無理なく投資を続ける」ための設計図です。
投資を仕事や人生の“邪魔をしない仕組み”として整える。
それがこの本の中核であり、そこに共感を持ちました。
2. 現在の投資環境との対比
結論:今の日本は、個人投資家にとって最もやりやすい時代です。
NISA拡充、低コストの投信普及、情報アクセスの改善。
20年前なら想像できなかった環境が整いました。
しかし一方で、米国株インデックスが40年上昇してきたのは「金利低下」という構造的追い風があった事実を忘れてはいけません。
今はその真逆――金利上昇局面です。
しかも、AIバブルという特殊要因が重なり、株式市場は“例外的な高値圏”にあります。
したがって、単純に「インデックスに任せておけばいい」という時代ではなく、
“市場が今の価格をどう評価しているか”を観察し続ける姿勢が求められます。
その意味で、私はいまでも「投資に時間をかける」ことを肯定的に捉えています。
3. 日本国債と円への見方
日本国債への信頼は、決して絶対ではありません。
日銀が実質的に国債を引き受け続ける構造の中で、
円の価値がゆるやかに毀損していくリスクは無視できません。
為替リスクを嫌って円資産だけに偏ることこそ、
中長期では“隠れたリスク”を抱える可能性があります。
したがって私は、**「日本円で持ち続けること自体がリスク」**という前提で、
外貨や実物資産を一定割合で保有する立場を取っています。
4. それでも、この本を薦める理由
著者の主張に100%賛成しているわけではありません。
私は、よりマクロ構造を意識し、
金利・通貨・需給といった動態を追うタイプの投資家です。
それでもこの本を薦めたい理由は、
「投資を生活の中にどう位置づけるか」という視点において、非常に示唆が多いからです。
-
仕事や家庭を犠牲にしない投資の距離感
-
長期で続けるための心理的防御
-
「お金=人生の選択肢を増やす手段」としての整理
この3点は、手法の違いを超えて、多くの人に共通する“軸”だと思います。
5. 結論
投資で重要なのは、どの手法を選ぶかよりも、
「どんな環境でも続けられる仕組み」を持てるかどうか。
この本は、その“仕組みづくり”のヒントをくれます。
インデックスを盲信するでも、否定するでもなく、
生活と市場のバランスをとるための“座標軸”を整える一冊です。
これは投資助言ではなく、判断材料の整理です。
参考(一次・準一次ソース)
-
『賢者の投資術』水瀬ケンイチ(朝日新聞出版)
-
東洋経済オンライン/著者インタビュー
-
note(読了者の感想記事)
-
Amazonレビュー/ブクログ
コメント
コメントを投稿